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第3者行為による障害の損害賠償との調整

交通事故など、第三者の行為によって障害が生じた場合、被害者は加害者から損害賠償を受けることがあります。一方で、公的年金制度(厚生年金や国民年金)からも障害給付を受けられる仕組みがあります。

ところが、この両方を受け取ると「二重補償」となってしまうため、法律では調整の仕組みが設けられています。

(厚生根金保険法条40条第2項、国民年金法第22条第2項)


第三者行為による事故で損害賠償を受けた場合、その賠償額の限度で年金給付を行わないことができると定められています。つまり、損害賠償と年金給付が重複する部分については、年金の支給が行われません。

障害給付の受給権が発生した場合は、次の算出式に基づき給付を行わない月数を算出し、第三者行為事故が発生した日の属する月の翌月からその月数分(最大36月)給付が行われません。

<給付されない期間の計算方法>
まず、損害賠償額から慰謝料や医療費などを差し引き、生活補償に相当する金額を算出します。次に、その金額を世帯における年金受給権者の割合に応じて調整します。最後に、基準生活費(1か月分の生活費に相当する額)で割り算を行い、何か月分に相当するかを計算します。

損害賠償の生活補償部分 × 世帯の中の年金受給権者(加給分含む)の割合 × 基準生活費

 = 給付しない月数

慰謝料が不明な場合の扱い
② 障害年金の障害等級が1級の場合は 1275万円
② 障害年金の障害等級が2級の場合は 850万円
④ 障害厚生年金の障害等級が3級の場合は 638万円
⑤ 障害手当金の場合は 425万円

<まとめ>
第三者行為による事故で障害を負った場合、損害賠償と年金給付が重複しないように調整が行われます。生活補償に相当する損害賠償額を基準に、最大36か月分まで年金給付が停止される仕組みです。慰謝料が不明な場合には、法律で定められた基準額を用いて計算されます。


2025年11月19日

別居している「生計を同じくする子」がいる場合

障害年金の請求時または受給中に「生計を同じくする子」がいる場合は、加給年金が加算されます。


この年齢要件は以下になります。
◎18才になった最初の3月31日まで
◎国民年金法の障害状態1級又は2級の20歳未満

基本的に住民票上、同じ住所に同居している場合は、このマイナンバーを裁定請求書に記入するだけで大丈夫です。

単身赴任や就学又は入院中や施設に入居していてやむを得ず、同居できないときはどうなるでしょうか?
別居していても、
・経済的な援助
・定期的に連絡、訪問しているとき
添付書類を提出し、生計同一関係が認定されます。

添付書類は以下の通りです。
① それぞれの住民票(マイナンバー記入で省略可)
② 生計同一関係申立書(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/kyotsu/20140425.files/A.pdf)
③ 第3者の証明書又は(※)生計同一関係を証明する書類


(※)生計同一関係を証明する書類
1 健康保険上の扶養になっている場合 → 資格確認書等の写し
2 給与の扶養手当等の対象となっている場合 → 賃金台帳の写し
3 税法上の扶養になっている場合 → 源泉徴収票等の写し
4 定期的な送金がある場合 → 振込が証明できる通帳等の写し
5 単身赴任の場合 → 辞令や出向命令、事業主が単身赴任を証明する書類の写し
6 就学による場合 → 学生証や在学証明書
7 入院や施設入所の場合 → 入院、入所証明書等、入院や入所にかかわる領収書

2025年11月05日

精神の障害年金受給が手帳の申請より先の場合、等級は同じ

障害年金と障害者手帳は制度が違うため、等級も認定審査基準も同じではありません。

しかし、精神の障害年金の受給が精神障害者保健福祉手帳の申請より先の場合、年金証書の写しを添付して申請すると、年金の等級と手帳の等級は同じものになります。



精神障害者保健福祉手帳の申請時に「年金証書の写し」を提出すれば、診断書は不要になります。
また、個人番号を申請書に記載することにより、「年金証書等の写し」や「直近の振込通知書等の写し」の添付を省略できます。(千葉県の場合)



千葉県の精神障害者保健福祉手帳 URL
https://www.pref.chiba.lg.jp/cmhc/kokoro/seishinshougai.html#a01

2025年10月21日

神経症(ICD-10コードの(F4)と診断された精神障害について

精神障害による障害年金の認定基準に、「神経症(F4)にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則 として、認定の対象とならない」とあります。

ただし、精神病の病態 を示しているものについては、統合失調症(F2)又は気分(感情)障害(F3)に準じて取り扱われ、ICD-10による病態区分のどの区分 に属す病態であるかを考慮し判断すること、と記載されています。

労災が原因で精神障害を発症した場合は、どうなるでしょうか?

厚生労働省が作成した「精神障害の労災認定」というパンフレットには、業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病(F3)や急性ストレス反応(F4)などです、という一文があり、F4が労災における精神障害の代表的なものだと表現しています。

<労災の精神障害認定>
https://www.mhlw.go.jp/content/001309223.pdf

4ページ目(労災)

 


 

一方、労災からは、認知症や頭部外傷などによる 障害(F0)及びアルコールや薬物による障害(F1)は除かれます。

労災は、たしかに原因が業務上にあるか否かを判定することも難しいと思いますが、障害年金も労災も目的を「健全な国民生活の維持及び向上に寄与」「迅速かつ公正な保護」としている以上、病名だけではなくICD-10コードが何かを確かめることは必要でしょうか。

2025年10月06日

認定基準の検査数値に異常はなかったものの3級となった例

請求人は間質性肺炎により、もともと障害厚生年金2級を受給していたが、更新時に等級に該当しないとされ、支給停止となった。

現況診断書には、
・両側肺移植を受け、術後免疫抑制剤・抗感染薬を使用し経過観察中
・胸郭が小さく動きが悪いため、食後や労作時に動機や息切れを起こし日常生活を続けることは困難
・自覚症状は、胸痛・体動時呼吸難が「有」
・他覚所見は栄養状態が「中」、胸部X線所見が胸膜癒着、胸膜変形が「軽」

検査数値は
・予測肺活量1秒率が「70.1」、(40以下が軽度異常)
・動脈酸素分圧が「70.9 Torr」(70以下が軽度異常)

活動能力(呼吸不全)の程度については、
・人並みの速さで歩くと息苦しさを感じるが、ゆっくりなら歩ける「ⅱウ」

一般状態区分は
・歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助を必要とし、軽労働はできないが日中の50%以上は起居しているもの「ウ」

医師の回答書は、
・肺移植後に頻脈性不整脈があり、その加療中であるため、一般状態区分を「ウ」とした。
・頻脈性不整脈・高血圧・心不全・貧血は、間質性肺炎及び両側肺移植を主な原因とする、と診断している。

 


これに対して
◎検査数値に異常値は認められず、外来通院は可能だが、
◎肺移植後の心不全や頻脈性不整脈が、間質性肺炎に起因するものである
◎免疫抑制中であるために外出や食生活に制限がある
◎胸郭が小さく、動きが悪い状態で労作時に息切れが生じている
◎頻脈性不整脈の加療中であり、軽労働もできない


ことを総合的に判断して、3級の「労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」のものに該当する、とした。

令和5年(厚)861号
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/syakai/dl/05-r06/03_06.pdf

2025年09月15日
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