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神経症(ICD-10コードの(F4)と診断された精神障害について

精神障害による障害年金の認定基準に、「神経症(F4)にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則 として、認定の対象とならない」とあります。

ただし、精神病の病態 を示しているものについては、統合失調症(F2)又は気分(感情)障害(F3)に準じて取り扱われ、ICD-10による病態区分のどの区分 に属す病態であるかを考慮し判断すること、と記載されています。

労災が原因で精神障害を発症した場合は、どうなるでしょうか?

厚生労働省が作成した「精神障害の労災認定」というパンフレットには、業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病(F3)や急性ストレス反応(F4)などです、という一文があり、F4が労災における精神障害の代表的なものだと表現しています。

<労災の精神障害認定>
https://www.mhlw.go.jp/content/001309223.pdf

4ページ目(労災)

 


 

一方、労災からは、認知症や頭部外傷などによる 障害(F0)及びアルコールや薬物による障害(F1)は除かれます。

労災は、たしかに原因が業務上にあるか否かを判定することも難しいと思いますが、障害年金も労災も目的を「健全な国民生活の維持及び向上に寄与」「迅速かつ公正な保護」としている以上、病名だけではなくICD-10コードが何かを確かめることは必要でしょうか。

2025年10月06日

認定基準の検査数値に異常はなかったものの3級となった例

請求人は間質性肺炎により、もともと障害厚生年金2級を受給していたが、更新時に等級に該当しないとされ、支給停止となった。

現況診断書には、
・両側肺移植を受け、術後免疫抑制剤・抗感染薬を使用し経過観察中
・胸郭が小さく動きが悪いため、食後や労作時に動機や息切れを起こし日常生活を続けることは困難
・自覚症状は、胸痛・体動時呼吸難が「有」
・他覚所見は栄養状態が「中」、胸部X線所見が胸膜癒着、胸膜変形が「軽」

検査数値は
・予測肺活量1秒率が「70.1」、(40以下が軽度異常)
・動脈酸素分圧が「70.9 Torr」(70以下が軽度異常)

活動能力(呼吸不全)の程度については、
・人並みの速さで歩くと息苦しさを感じるが、ゆっくりなら歩ける「ⅱウ」

一般状態区分は
・歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助を必要とし、軽労働はできないが日中の50%以上は起居しているもの「ウ」

医師の回答書は、
・肺移植後に頻脈性不整脈があり、その加療中であるため、一般状態区分を「ウ」とした。
・頻脈性不整脈・高血圧・心不全・貧血は、間質性肺炎及び両側肺移植を主な原因とする、と診断している。

 


これに対して
◎検査数値に異常値は認められず、外来通院は可能だが、
◎肺移植後の心不全や頻脈性不整脈が、間質性肺炎に起因するものである
◎免疫抑制中であるために外出や食生活に制限がある
◎胸郭が小さく、動きが悪い状態で労作時に息切れが生じている
◎頻脈性不整脈の加療中であり、軽労働もできない


ことを総合的に判断して、3級の「労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」のものに該当する、とした。

令和5年(厚)861号
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/syakai/dl/05-r06/03_06.pdf

2025年09月15日

心原性脳塞栓症との相当因果関係について

心臓で作られた血の塊が脳の血管を詰まらせてしまい、脳梗塞を発症する病気を心原性脳塞栓症といいます。

この心原性脳塞栓症症の原因として、平成27年(厚)252号裁決から、以下の疾病について発生頻度が高いとされています。

① 弁膜症を伴わない心房細動
② 洞不全症状群
③ リウマチ性心弁膜疾患
④ 急性心筋梗塞
⑤ 心室瘤
⑥ 拡張型心筋症
⑦ 人工弁置換術後(特に機械弁)
⑧ 僧帽弁逸脱症
⑨ 卵円孔開存などのシャント性心疾患
⑩ 感染性心内膜炎
⑪ 非細菌性血栓性心内膜炎
⑫ 左房粘液腫
⑬ 僧帽弁輪石灰化、石灰化を伴う大動脈弁狭窄
⑭ 心房中隔瘤

平成27年の裁決事例による請求人は、慢性心房細動及び僧帽弁・大動脈弁逆流症でしたが、慢性心房細動及び僧帽弁・大動脈弁逆流症は、心原性脳塞栓症のリスク(危険因子)の1つではあるが心原性脳塞栓症が相当因果関係を有する同一関連傷病と認めることはできない、とされました。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/syakai/dl/05-h28_29/07_05.pdf

ちなみに、第56回(令和2年)理学療法士国家試験第88問に「心原性脳塞栓症の原因として誤っているのはどれか」という問いに対して、選択肢として、卵円孔開存、拡張型心筋症、三尖弁狭窄症、慢性心房細動、感染性心内膜炎があり、正解は三尖弁狭窄症でした。
つまりは、この設問上、慢性心房細胞は心原性脳塞栓症の原因とされています。

ただ、この平成27年の裁決では障害年金請求上、相当因果関係にはあてはまらないとされたようです。

2025年08月26日

診断書の種類

障害年金を請求する際の診断書は、書式が決まっており全部で8種類あります。

① 眼の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-22.files/01-1.pdf


② 聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-17.files/02-1.pdf


③ 肢体の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-18.files/03-1.pdf


④ 精神の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.files/04-1.pdf


⑤ 呼吸器疾患の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-21.files/05-1.pdf


⑥ 循環器疾患の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140603.files/06-1.pdf


⑦ 腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20150416.files/07-1.pdf


⑧ 血液・造血器・その他の障害用
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-16.files/08-1.pdf



診断書は障害の原因となった傷病に応じて取得します。障害が複数ある場合はそれぞれの診断書が必要になる場合があります。

例えば、脳出血により半身麻痺と高次脳機能障害が発生した場合、③の肢体の障害用と④の精神の障害用の診断書を提出します。
さらに、言語障害や咀嚼に障害があり、流動食になってしまったときは、②聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用の診断書の提出も検討します。

※診断書取得には料金が発生しますので、事前に等級に該当することを確認してから取得して下さい。

また、診断書の名前だけだとわかりづらいのですが、
●知的障害・発達障害 は④の精神の障害用
●がんや難病などで全身に症状が出ている場合は、⑧ 血液・造血器・その他の障害用
を提出します。

2025年08月16日

不支給事案を点検へ

厚生労働省は令和7年6月11日、令和6年度の障害年金の認定状況の調査報告書を公表しました。

 

新規裁定1,000件のうち、非該当(等級に該当しない)は130件(13%)となり、過去最高であることが分かりました。

 

非該当割合を種類別に見ると、精神障害が12.1%と前年(6.4%)から大きく上昇しており、その要因には「障害等級の目安より下位等級に認定され不支給となっているケース」が75.3%と前年(44.7%)より増えていました。

 

厚生労働省は今後すべての不支給事案について複数の認定医による審査を行うほか、過去の精神障害等の不支給事案の点検をする方針を示しました。

 

こちらは調査報告書です。

https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/001502249.pdf

 

 

 

 

 

2025年08月01日
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