返戻の機会を与えず不支給にした処分が取り消された重要裁決(令和5年(国)第301号)
今回紹介する裁決(令和5年(国)第301号)は、「精神科以外の医師でも、当時診察していた医師であれば精神の診断書を作成できる」 という極めて重要な判断を示しました。
さらに、保険者が請求人の申出を無視し、診断書提出の機会を奪ったまま不支給処分を行ったことが手続違反であると明確に指摘しています。
この記事では、この裁決の背景とポイントをわかりやすく解説します。
■ 事案の流れ
1. まずは「事後重症」で2級が決定
請求人は過去に頭蓋咽頭腫の手術歴があり、その後「器質性情緒不安定障害」で障害基礎年金2級が事後重症として認められていました。(いわゆる「先行処分」)
2. 次に「20歳到達日の障害認定日」で請求
その後、下垂体機能低下症を原因とする障害について、20歳到達日(障害認定日)での障害基礎年金を請求しました。
ここで問題となったのが、20歳当時は精神科を受診していなかったという点です。
■ 請求人は「返戻してほしい」と明確に申し出ていた
請求人は裁定請求時に「連絡事項書面」を提出し、次のように説明しています。
「20歳当時は精神科未受診だが、精神の診断書(様式120号の4)が必要であれば、当時診ていた内分泌科医が記載可能なので返戻してほしい」
つまり請求人は、「精神科未受診でも、当時の主治医が診断書を書けるので、必要なら返戻して指示をください」と丁寧に申し出ていたのです。
■ しかし保険者は「精神科未受診=診断書は無理」と判断
「精神科未受診だから精神の診断書は作れない」 と決めつけ、請求人の申出に一切応じず、そのまま不支給処分(原処分)を行ったのです。
■ 審査会の判断:この対応は「手続違反」であり不当だと、この保険者の対応を厳しく批判しています。
① 精神科以外の医師でも診断書は作成できると審査会は明確に述べています。
障害認定日当時に診察していた医師であれば精神科標榜でなくても精神の診断書を作成できる。その内容を確認もせず「認定できない」と決めつけたのは不適切。
② 請求人は「必要なら返戻してほしい」と申し出ていたにもかかわらず、保険者は連絡もせず、診断書提出の機会を奪いました。
審査会はこれを「適正な手続を尽くしていない」 と断じています。
③ 結論:原処分は取り消し
そのため審査会は 不支給処分の取り消しをしました。(支給決定ではない)
今回の裁決は、 請求人の申出を無視し、診断書提出の機会を奪った保険者の手続違反を明確に認定した という点で非常に重要です。
そして何より、 精神科以外の医師でも、当時診察していた医師であれば精神の診断書を作成できる という判断は、障害年金請求における大きな指針となります。